大仰な木偶の仕草に秋思憑く

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  • みのる:春愁(春の日にふと感じる物悲しさ)と、秋思(秋にふと感じる寂しい思い)はよく似た心象の季語。「秋思憑く」は使いますが「春愁憑く」とはいいません。憑く…は、「とり憑かれる」の意。ぼんやりとしていて人形のような人のことを木偶の坊といいいますね。組織でも自主判断で行動出来ず指示待ち型の人を揶揄して言うときもあります。人形もまた黒子の助けなければ躍らず。大仰な木偶の所作を見ていて俄に寂しい気分が募ったのです。「おもしろうてやがて悲しき鵜舟かな 芭蕉」の句に似た雰囲気があります。 - 2024/02/25(日)
  • えいいち:木偶がわらなかったので調べると人形浄瑠璃の人形だとわかり合点がいきました。人形浄瑠璃は実際に見たことがないのですが、昔はよくテレビで放映されていて見ていた記憶が鮮明にあります。大仰な仕草と作者は言っていますが、その動きは実にリアルで情感がこもっているように見えて、まるで本当に人が演じている様な気になってしまいます。ですので私は秋思憑くという措辞には、人形に人の感情が憑いたようだ、という感動の表現かと思いました。 - 2024/02/25(日)
  • 澄子:大仰な仕草とありますから木偶は人に操られる人形……糸操り人形より浄瑠璃文楽のような一体の人形を三人が息を合わせ動かすものを思いました。秋思とは、秋に感じるもの寂しい心模様。人形浄瑠璃は高い芸術性を追求するもの、地域の娯楽として楽しまれているもの、神事として奉納されるものなど、地域ごとに多様な形で継承されているようです。御句から文楽と比べて一回りも二回りも大きな光沢のある塗りの人形を使い、観客にアピールするよう前方に突きだし大きな振りで演じられたという阿波人形浄瑠璃を想いました。 - 2024/02/25(日)
  • むべ:徳島の伝統芸能に「阿波木偶箱まわし」と呼ばれる人形浄瑠璃があるそうです。動画を確認しましたところ、箱から人形を取り出して、人形の下半身に左手をいれ、右手で棒のようなものを持って人形の手や袂が大きく動く仕組みのようです。たしかに大げさな動作ですが、野外の農村舞台で上演された歴史を思えば、大げさな動作でないと観客に見えなかったかもしれません。秋思憑くという季語は私には理解が難しく、将来挑戦してみたい季語で、掲句でも解釈が難しかったです。命のない人形に命を吹き込むかのように、人形師が操作をしているのを見て、物思いに耽った…という句意かと思いますが、作者の胸にはどのような思いが去来したのでしょう… - 2024/02/24(土)
  • かえる:日本各地に木偶の芸能はあるようですが、どれも少し滑稽で物悲しいのは共通しているように感じました。小さな人形たちは黒子役の人間に操られ、大ぶりな仕草で活発に動きますが、一様に無表情で遠くを見るような目をしています。阿波の木偶など、なんと黒子は芸を続けながら、用の済んだ木偶を丁寧に畳んで箱の中に仕舞ってしまう。驚くほどシュールです。実際に目にした作者は切ない気持ちになり、秋の物思いに耽ってしまったのではないかと思いました。 - 2024/02/24(土)